チーム跳び箱の実践をQ&Aで考察してみました。

Q: チーム跳び箱をどのような学習指導過程で取り組めばいいのですか?
A: 今回の学習では、以下のように取り組みました。

 6年生では実態から考えて技を自由に選択できる「フリー学習」に取り組ませました。ただし、場づくりの方法や練習の仕方を指導する時間として「チャレンジ道場」の時間を設けています。ここでは技の習得に必要な感覚や基礎を身につけるために児童には「数をたくさんこなすこと」を目標に取り組ませました。チーム跳び箱は4時間目から始めています。最初は場作りの方法も分からないので、1時間いっぱい使いました。グループごとに発表させたり、話し合いをさせたりしたので、このぐらいの時間が必要でした。5時間目からは、チーム跳び箱は12分ぐらいとりました。チーム跳び箱のあとにチャレンジタイム(できそうな技に挑戦する時間)をとりました。技ができるようになったら、次の時間のチーム跳び箱に加えていきます。
 もちろん、この通りに時間配分する必要はありません。実践を行った学級は5年でも同じような学習形態で行っていますので、非常に準備が速くできます。実態に合わせて指導計画を立ててください。
Q: チーム跳び箱にはどんな学習効果がありますか?
A:  一番「いいなあ!」と思ったのは、発表会の時間が短くてすむこと、でしょうか。従来の跳び箱の発表会はひとりずつだったので時間がかかり、最後のほうは見るほうもだれかけていました。その点このチーム跳び箱は1つの班が15秒程度ですから、最後まで緊張感が持続し、ぴりっとしまったいい発表会になりました。演技する技はひとつでも、チームの演技を成功させるという目標もありますから、子どもは満足していました。この点は集団で取り組む価値があるものと思われます。
 そのほかの学習効果を挙げますと
 ● 技を美しくする意識が自然に生まれてくる。
  演技のはじめの合図や、フィニッシュのポーズをきちっとすることは器械運動にとって大切なことですが、この考えは子どもから自然には生まれてきません。 指導者の指導の徹底が必要なんですが、なかなか定着しないものです。しかし、シンクロ演技や集団跳び箱に取り組ませると、自然に自分の演技のできばえを意識するようになります。それは、集団で取り組むことで自分の演技を美しくする必然性が、出てきたのだと思われます。  
 ●  友達の技や安全の管理に関心を持つようになる。
  個人的な運動である器械運動は、自分の運動にしか関心が向かないことがあります。しかし,集団で取り組み、全員でひとつの演技とすることで、友達に助言したり、出来栄えを話し合ったりするようになります。また、危険のない跳び箱の置き方を話し合うことで,安全に対する関心が高まります。
 ● 「集団の勢い」がある
  「わたし5段が跳べたよ!」何度やっても跳びこせなかった児童が、チーム跳び箱のあと,息せき切って言いにきてくれました。1人でやっているときはとうていできるような跳び方でないのに、発表のときの勢いのよい跳び方!びっくりしました。集団の勢いは子どもの力を引き出します。
Q: チーム跳び箱の欠点はどんなところですか?
A:

 一番の欠点は、使える器械(跳び箱・マット・セーフティマット・ロイター板)に制限があること。1つの班(今回の実践では8人)に跳び箱2つは最低ほしいところ。1つだと高さがうまく合わせられなかったり、連続して2つの跳び箱を跳ぶ楽しみ方ができなくなります。跳び箱の数が多いほど、バラエティーにとんだ跳び方が工夫できるでしょうが、それだけ危険がふえたり、準備に時間がかかることを覚悟しないといけません。
また、シンクロ跳び箱の場合は、技の出来栄えが同程度の場合しかうまくいかない場合が多いです。また、跳び箱の高さもそろっていないとシンクロさせられない場合がありますので、全員が取り組むことはむずかしいかもしれません。

Q: 開脚跳びもできない児童がいた場合、どうすればいいのですか?
A: この実践はすべての学級にそのまま使えるわけではありません。跳びこせない児童がいてもみんなが支えあい、認めあえるクラスかそうでないか、にかかってくると思います。「跳び越さなくてはならない。」という意識が強すぎると跳べない子は楽しくないでしょうが、「最後の子は必ず跳び箱の上にとびのり、上でポーズをとらなくてはいけない。」というルールを提示するとどうなるでしょうか。もし跳び越せない児童がいたら、最後に演技させればいいし、そんな子がいなければ、順番に最後に跳ぶ子を回していけばいいでしょう。とはいえ、子どもはやっぱり跳び越したいもの。跳び越せない子の気持ちも考えて、この実践を導入してください。

(C)Copyright by Kiyotaka Nakajima
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