子どもがとびつく体育・器械運動の指導

跳べない児童の運動の感じをことばで表すと…

○ 踏み切り板で立ち止まっている感じがする。
○ 踏み切り板の上で腰がストンと落ちている感じがする。
○ 手を着いたとき、自分の腕でスピードを止めている感じがする。 腕でつっかえ棒をしている感じがする。
○ 踏み切り板の上では、すでに跳ぶことをあきらめている感じがする。

第2章
助走をつけると跳べないのはなぜ?
もっともっと教えまくろう! 先生であるあなたは開脚跳びができますか?たぶんできるでしょう。もしかしたら、得意であるかもしれません。しかし、そこが曲者なのです。「できること」と「教えること」が全く別物であることは、プロ野球の往年の名プレーヤーが監督するチームが万年最下位なのをみてもわかりますね…。実は私も器械運動が得意なのですが、小学生のころ、跳び箱に苦労した経験などなく、なんとなく上手に跳んでいたので、跳べない子をみると、どうして跳べないのか理解に苦しみました。なんどやっても跳べない子を見て、イライラしたりしたものでした(正直なところ…)。しかし、跳べない子に徹底的に付き合うことによって跳び箱運動の本質に迫ることができたのです。
■次の日の放課後から、特訓が始まりました。Nさんなどは「跳び箱の特訓まだかな?」と何度も聞いてきていました。あんなに授業中悩んでいたのに、教えてもらうのををこんなに楽しみにしている。前回の指導要領の改訂で「楽しい体育」「主体的に取り組む体育」が強調されすぎ、「教えること」がまるで罪悪のように言われ、「あなたの授業は教えすぎである」とまことしやかに指導くださる人もいました。しかし、まだまだ、教えたりないと思っているのです。なぜなら、今、子どもがつまずいていることを解決するのがどんなに難しいことか分かるからなのです。ほとんどの先生が「なぜとべないか?」を子どもに説明できない。それを、子どもに「気づきなさい。」と期待するのはおかしいと思うのです。先生でも分からないことを、子どもに分かることを期待しているのです。
練習開始!

■始めNさん、Mさん、Kくんのつまずきは、「肩が前に出ない。」ことだと思っていました。ですから、右の写真のような練習の場を用意しました。これは、跳び箱の上に腰掛け、腕で体重移動しながらセーフティマットに顔から落ちるという少々荒っぽい練習です。肩を思い切り前に出すことを体感してほしかったのです。子どもたちは最初は怖がっていましたが、結構面白がってやっていました。
 

子どもがとびつく体育・器械運動の指導

■次は、連結跳び箱での練習です。高さの違う2つの跳び箱をつなげて、低いほうの跳び箱に立ち、高いほうの跳び箱を跳びます。この方法ですと腰が簡単に上がるため、肩が前に間単にでるようになります。3人ともこれはすぐにできるようになりました。ところが3人とも手と足を同時に着いていることに気づきました。

子どもがとびつく体育・器械運動の指導
次に上手な子に跳ばせてみると、「足−手」の順番に跳び箱に着き、手と足は同時に着かない事がわかります。これは、「体の投げ出し」ができているためですが、「体の投げ出し」ができない子は、どうしてできないのでしょうか?単にこわいから、だけなのか、それは分かりません。 子どもがとびつく体育指導・器械運動の指導
とにかく、体を投げ出せるようになるために、今度は2つの跳び箱の距離を離してみました。少々動きはぎこちないものの3人とも跳びこせるようになりました。「跳べそうだ!」今まで跳び箱の上に乗ることしかなかった3人が、練習の場とはいえポンポン5段の跳び箱を跳びこしているのですから、3人の表情は見る見る明るくなりました。私もうれしくなり、次は4段の跳び箱に挑戦させてみようと思いました。4段の跳び箱といえば、5年生の児童にとっては、またいでしまえるくらい低い跳び箱です。助走はなしにして、子どもを跳び箱の前に立たせて、跳んでごらんといいました。これだけのことですが、やはりポンと1つ跳び箱を置くと、子どもの顔がサッと曇ります。 子どもがとびつく体育・器械運動の指導
ショック、助走をすると跳べなくなる! ■肩を前に出す技術はできているので、もう跳びこせるはずなので、「大丈夫!もう跳べるはずだから思い切ってとんでごらん!」と声をかけました。少しためらいを見せながら、Nさんがチャレンジしました。助走はなしでしたが、しっかり体を前にやって跳びました。おしりがすれすれでしたが、なんとか跳びこせたのです。「やったー!」他の2人から拍手が起こりました。そして、そのあとの練習で残りの2人もなんとか跳べたのです。しかし… 子どもがとびつく体育・器械運動の指導
■ここで、 「よかったね。おめでとう。」と別れればいいのかもしれません。事実、子どもはこれで「4段は跳べた」と思っていますし、大部分の「跳べない子ども」は、この跳び方なら、すぐにできるようになります。しかし、助走なしでは、4段は跳べても5段は無理です。今の跳び方では、どう見ても「またいでいるだけ」です。私が「じゃあ、次は走ってきて跳んでごらん!」と言ったときから、試練が始まってしまったのです。結果は無残でした。今までの練習の成果などどこへいてしまったんだろう。跳び箱の前で失速し、跳び箱の上に乗ってしまうばかり…全く始めの状態に戻っていまったのです。どうして、こんなことになってしまったのでしょうか??? 子どもがとびつく体育・器械運動の指導
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第3章に続く

 

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