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第1章 なんで跳べないんだろう? |
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ケンケンパーができない!前転もできない… | 上の写真を見てください。跳び箱が「跳べる児童」と「跳べない児童」の写真の比較です。あなたのクラスにもこんな児童はいませんか?「跳び箱は10分で跳ばすことができる」なんて言う人もいますが、それは「10分で跳ぶことができる児童もいる」と言い変えた方がいいのではないか?と思います。跳べない子は本当に跳べないのです。 | ||||
■それは4月の体育の時間のことでした。今度受け持つ5年生はは明るく活発で、休み時間は男女入り混じり、ドッジボールで遊んでいます。外遊びの経験も多いので、ボール運動の経験は女子にも比較的多いようです。 私は学級を担任したとき、まず、はじめに「ケンケン・トーン」をさせます。それによって、その児童が跳び箱の「片足踏み切りから両足踏み切り」がスムーズにできるか見ます。5人ほどがドタンバタンという感じでうまくいきません。「このクラスは手強いな!」と感じました。その中でも、K君、Nさん、Mさんはまったくリズムが合っておらず、床にジャンプの力をすいとられているようです。ためしに、前転をさせてみたところ、3人ともできない!(絶句)腕の支持がまったくなく、頭のてっぺんをついておしりが上がらずばたばたしてるのです… |
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誰でもすぐにとべるようになる方法なんてあるのか? | ■「この方法で魔法のように、すべての跳べない子どもが跳べるようになった。」こんな方法が本当にあるのでしょうか?結論から先に言うと、こんな方法はありません。なぜなら、開脚跳びの運動の構造は非常に複雑なので、すべての児童のつまずきに対処できる指導方法や補助の方法はないからです。 例えば、チョークで跳び箱の上に線を引いて、「手をこの線より向こうに着きなさい。」という指導はよくなされていますが、この方法で跳べるようになる子は跳べるし、跳べない子はやっぱり跳べないのです。 また、向山洋一先生が提唱する「向山式開脚跳び指導法」というのもありますが(最近では副読本の指導書にものっていますね。)、やっぱりこれでできる子はできるし、できない子はできないのです。 その理由は、どちらも子どものつまずきの一部分の解決でしかないからなのです。前者は「手の着き方と体の投げ出しのつまずき」に対処する方法であるし、後者は「腕を支点とした体重移動のつまずき」への対処方法なのです。だから、それ以外のことでつまずいている児童には、ふさわしくない指導方法といえます。(もちろん、これらの方法でもできるようになった子はたくさんいますよ…あくまでもすべての児童にあてはまるわけではないということです。) |
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2人はすぐ跳べた!あとの3人は… | ■5月になって跳び箱の授業を本格的に開始しました。2人はその日のうちに跳べました。「手を着くときパンと鳴らしてごらん!」「立ち止まらず勢いよく跳んでごらん。」「視線はここだよ。(跳び箱の着地の位置に立って)」これぐらいの声かけで、みるみる腰が前に出てきて跳べそうになります。「重大なつまずき」でない児童は、ちょっといっしょに練習するとできるようになります。向山式開脚跳び指導法で跳べるようになる児童はこの程度の児童ではないかと思います。私は同時に3年生の器械運動の授業もやらせてもらいましたが、学年が低いほど、この「重大なつまずき」を持っている児童が少ないような気がします。学年が上がり、5・6年生になれば、体につまずきが染み付いてしまい、なかなかとれないのです。そして、長年の跳び箱コンプレックスが体に染み付いています。 | ||||
■跳べるようになった児童はいいのですが、いくらやっても跳べない子は、体育の時間中跳び箱の上にドスンと乗っかっています。「めあて@…自分ができる技で楽しむ」とスパイラル式のめあて学習で掲げられていますが、「跳び箱の上に乗っかって何を楽しむねん!」と思ってしまいます。なんとしても、この3人を跳ばしてやらにゃあいかん。なかなか手強そうな3人ですが、私は深く決心したのでありました。 「先生といっしょに練習するか?」3人に聞くと、「やりたい!」とやる気のある声が返ってきました。子どもは教えてもらいたがっているのです。5年間自分を悩ましてきた跳び箱。その跳び箱に復讐心を燃やしているかのようです。 しかし、この日から、試練の日々が続くのでした… |
第2章に続く…6/30頃発刊 |